かてい農園での栽培時に意識をしておく品種の話
- 秋山 智美
- 2月1日
- 読了時間: 6分
更新日:6月15日
保けん野菜では、かてい農園での栽培において、“種採り”をして繰り返し栽培をしてみたり、芽が出た食用のじゃがいもを種芋として使ったり、その都度種や種芋を購入するのではない、生活の中での循環もぜひ楽しんでいただけたらと考えています。その際、ちょっとだけ意識をしておく必要があるのが育てる品種。今回は品種に関して気にしておきたい、以下2つの観点をご紹介させてください。
種採りをして育てた場合の形質の維持
種採りをして育てた野菜を他に人にあげる場合の法規制
種採りをして育てた場合の形質の維持
現在、一般的に流通している野菜のほとんどは「F1種」という、雑種の一代目の品種です。このF1種を作れるようになる前までは、長い間「固定種」と呼ばれる種を使い種採りをしながら栽培をしていました。種採りをしながら栽培を続けていくには「固定種」の種がおすすめです。
※じゃがいものように、種ではなく芋などから栽培するものは「クローン」となるため、基本的に元の形質がそのまま受け継がれます。
固定種: 代を重ねても形質が大きく変化しない種のことで、各地の環境にあった種の選抜を繰り返すことで形質が固定されていきます。世界から日本へ入ってきた野菜が少しずつ各地に広がり、その土地に合ったものが選抜され定着していきます。江戸時代には参勤交代により地域を大きく超えた種の交易が行われ、また新たな地域でその土地に合ったものが生まれていきました。現在、伝統野菜と呼ばれるような野菜は、この頃にできていったものが多いと言われています。 “代を重ねても形質が大きく変化しない”と言っても、自然界での交配を行っているため少しづつ形や大きさ、味、生育時期などの形質がばらつきます。しかしこのばらつきも大切で、選抜を少量で行いばらつきを少なくすることもできますが、近親相姦と同じメカニズムで遺伝子の多様性が損なわれ、弱くなっていく可能性があります。
F1種: 固定種のばらつきは、安定的に、大量に、味や見た目の揃った野菜を生産したい場合には、邪魔となります。そこで開発されたのがF1種(Filial 1 hybrid)と呼ばれる、雑種一代目の品種です。雑種の一代目は、親世代よりも生命力が高く、形や大きさ、生育時期などの性質も揃った子世代として生まれてくるという性質があります。 F1種は効率良く野菜を生産するにはとても適した種である一方で、この性質が出現するのは雑種の第一代目に限られるため、種を採って栽培するのには適していません。そのため野菜の生産においては、種は毎回購入して育てるというのが一般的になっています。メンデルの法則を思い出していただくと、雑種2代目の品種(F2種)のばらつきをイメージしていただけるかと思います。
例えば、病気に強い(顕性形質)けどまずい(潜性形質)種と、病気に弱い(潜性形質)けどおいしい(顕性形質)種を掛け合わせて、病気に強くて美味しいF1種を作り、さらにこのF1同士を掛け合わせてF2種を作る際の、「病気へ耐性(強いか弱いか)」に注目したイメージ図は以下の通りです。病気への耐性以外にも様々な形質が組み合わさるため、かなりばらつくことが想像していただけるのではないかと思います。
※以前は優性/劣性と呼んでいましたが、優劣ではなく表面に現れるかどうかということで、「顕性/潜性」と呼び方を見直しています。
ただ固定種であっても、栽培する量が少ないと形質が安定しにくかったり、近くで栽培している別の品種の花粉と受粉をすることで形質が変わってしまったりと、形質が大きく変わってしまう可能性もあります。
種採りをして育てた野菜を他に人にあげる場合の法規制
ニュースなどでも時々目にする、日本で開発された品種の海外への流出。シャインマスカットは2016年頃の流出後、2022年には中国では日本の栽培面積の約30倍、韓国では2倍以上に上っています。他にも、イチゴ、サクランボ、サツマイもなど、様々な品種が流出していると言われています。このような状況を背景に、新たな品種を開発した人の権利(育成者権)を保護する法律、種苗法が2021年~2022年にかけて改正されました。
これに伴い、ご家庭での栽培に当たっても注意が必要になったのが、“種採りをして育てた野菜を他に人にあげる”というケースです。野菜の種には、「登録品種」と呼ばれる種苗法に基づいて品種登録され、育成者に知的財産権の一つである育成者権が付与されている品種と、そうではない「一般品種」があり、どちらの場合も家庭で楽しむ範囲では、育てることにも、種を採ることにも制限はありません。ただ、“誰かにあげる”という行為は家庭で個人的に行う行為の範囲外と捉えられ、育成者権を侵害する行為とみなされてしまいます。そのため、“種採りをして育てたものを誰かにあげる”際は、「一般品種」かどうかをご確認ください。ご不安な場合はお気軽にご連絡をいただければ幸いです。
一般品種:誰でも自由に利用が可能
品種登録されたことがない品種(在来種と呼ばれる地域で代々受け継がれてきた品種など)
品種登録の登録期間が切れた品種
栽培、販売、種採りなどを自由に行える
登録品種:育成者権者の許諾を受けて利用可能
種苗法に基づき登録をされた品種(般品種にない新しい特性を持ったものが登録)
正規ルートで購入した種からの栽培、販売は自由に行える
個人的な利用を越える範囲(販売・譲渡など)での、無断での増殖(種採りなど)は禁止
家庭菜園の範囲では、種採りをして栽培することは問題ない
ただし、収穫したものを他人に販売や譲渡することは禁止
登録品種に該当する種には、以下のロゴが表示されている
春じゃが栽培の準備
今月、来月と保けん野菜でもオンラインで植え付けを行うじゃがいも。食用のものを種芋としてお使いいただいてOKという旨、ご案内をしておりますが、収穫したじゃがいもを譲渡いただくケースに備えて、一般的に多く出回っている品種、保けん野菜でお届けしている品種について、一般品種・登録品種に分類したものが以下です。
一般品種(栽培したものの譲渡OK)
男爵薯
メークイン
キタアカリ
デジマ
アンデスレッド
十勝こがね
シンシア
デストロイヤー(グラウンド ペチカ)
登録品種(食用で購入したイモから栽培をしたものの譲渡NG)
アイマサリ
シャドークイーン
ノーザンルビー
ご自宅で消費いただく分には特に気にしなくてOKですので、ぜひお気軽に栽培してみていただけたらと思います。以下、改めて春じゃがの植え付け準備「芽出し」の方法となります。保存している間に芽が出てしまったものを植えていただいてもOKですが、もし「芽出し」をされる場合はご参考にしていただければ幸いです。
<タイミング>
植え付けの2~3週間ほど前を目安に行います。植え付けをされる方は、2月上旬あたりを目途に、芽出しを始めてみていただければと思います。
<場所>
10℃~20℃ほどの気温で適度に光が当たる場所にじゃがいもを置いておきます。温度は発芽そのものに必要なことに加え、光はひょろっと細長くなってしまうのを防ぎます。
<置く向き>
あまり気にしなくて大丈夫ですが、じゃがいもには芽が出やすい場所と、そうでない場所があります。1枚目の真ん中あたりに見えるのが、芋がストロンという地下茎と繋がっていたヘソの部分です。この反対側から芽が出やすいため、ヘソを下にして置いておくのがおすすめです。
少しもどかしさを感じられる内容だったかもしれませんが、「種を採って繰り返し栽培をする場合」「種採りを経て収穫したものを誰かにあげる場合」というケースに限っての内容ですので、ぜひ、お気軽に始めてみていただけたら幸いです。何かご不明点やご懸念事項がありましたら、お気軽にご連絡下さい。
