かてい農園を始めていただくに当たっての栽培の基本
- 秋山 智美
- 2025年10月4日
- 読了時間: 10分
更新日:2025年10月4日
先月、多くの方とじゃがいもの植え付けをオンラインで一緒にやらせていただき、無事芽が出てきた!という声を続々といただく一方で、土の中で腐ってしまったというケースも伺っております。涼しくなってから植えたい一方で、あまり遅いと大きくなる前に寒さが来て育ちにくくなってしまうのが危惧されるため、残暑が続き秋が短い昨今の気候ではタイミングの難しさを感じています。
本日は、かてい農園をはじめられるに当たって、多くの野菜の栽培に共通する“栽培の基本”をお届けさせてください。育てられている野菜の栽培の答えには直結しないかもしれませんが、検索をして出てくる栽培方法に合点がいく、栽培中に違和感があった時に原因に少しだけ辿り着きやすくなる、など、ちょっと栽培がしやすくなる、そんなきっかけになれば幸いです。 ※栽培キットをご購入いただいた方にお届けしているリーフレットの内容と、重複する内容がございます。

かてい農園とは
ご家庭のプランターや庭などで、野菜を育て続ける過程を楽しみながら学ぶ農園です。収穫を楽しむことはもちろん、様子を観察しながら野菜が育つ環境を整え、育った野菜を食べる日々を通じて、様々な体験を積み重ねていきます。“出来るだけたくさん収穫をする”ことではなく、まずは“気軽に楽しみながら続ける”ことを大切にしたいと考えています。栽培をしながら、ぜひ皆さんそれぞれに合ったかてい農園の形を見つけていただければ幸いです。
スーパーに行けばすぐに手に入る野菜も、種から育てていくとなると食べられるのは数ヶ月先。時間をかけて育てたとしても、育てる過程で枯れてしまったり、虫や鳥に食べられてしまったり、思うように育たないこともあるかもしれません。それでも今は、上手く育たなかったことが明日食べるものが無い、ということには直結しないからこそ、その過程を楽しみながら学んでいくことができると思っています。 ※詳細は、こちらのサイトもぜひご覧いただければ幸いです。
栽培の基本
多くの野菜に共通する基本となる情報をコンパクトに記載しています。“全体像を知ってから育てたい”という方は最初に、“まずは育てたい”という方は栽培をしながら、関係個所に目を通してみていただければと思います。
ー プランターを置く場所・置き方 ー
日当たり、温度、風通しを確認して、プランターを置く場所を決めましょう。
🌤️日当たり 野菜により、必要な光の強さや量が異なります。特に実を食べる野菜(果菜類)は光を好むものが多いので、日当たりの良い場所を選びましょう。
🌡️温度 コンクリートなどの温度変化が大きい場所に置く場合は“すのこ”を敷くなどの工夫が必要です。特に夏は、かなり高温になります。また室外機の前は避けましょう。
🍃風通し 風通しが悪いと、病気になりやすく、虫にも食べられやすくなってしまいます。“すのこ”などを利用し、風通しが良い環境を作るのもおすすめです。
ー 準備するもの ー
栽培をする野菜や季節などにより多少異なりますが、概ね共通するものをご紹介しています。
種 保けん野菜のキットでは、固定種という、種を採って育てても似た形質の野菜ができやすい品種をお届けしています。もし良ければ、ぜひ種を採ってまた蒔いてみてください。好みの味やご自宅の環境で育ちやすい種を選び続けて、自分だけの種となっていきます。
プランター 小さいとプランター内の水分、養分、温度などの環境変化が大きく、育てるの難易度が高くなります。置くスペースに余裕がある場合は、大きめのものをおすすめしています。またプラスチックなど水を通さない素材の大きなプランターで、排水穴が少ないものを使う場合は鉢底石や鉢底ネットを敷いて排水性を良くしますが、それ以外の場合は基本は特に入れなくて大丈夫です。
培養土 ご購入いただく場合は、“野菜用の培養土”と表示されているものが使いやすいです。複数種類の土や肥料分も混合されているので、そのままお使いいただけます。また繰り返し栽培を続けていると、成長への利用、流亡、分解などにより、性質が変わってきます。“栽培に適した土”も参考いただき、時々腐葉土などを付加しながら使うのがおすすめです。
肥料 キットでは、栄養価が高すぎない、じわじわと効くものをお届けしています。野菜により不要ですが、実を食べる野菜は多くの栄養が必要なため、成長の様子に合わせてお使いください。購入される場合は、“果菜類用”もしくは“野菜用”の肥料が汎用的に使いやすいです。また大きく分けると、化成肥料と有機肥料があり肥料成分が効くスピードと必要量に違いがあります。最近は、両方を含む混合タイプのものも多くなっています。有機肥料、もしくは混合タイプのものが使いやすいかと思います。
化成肥料 分子が小さくシンプルな構造で、少量ですぐに効きます。一方で、あげすぎてしまった時の影響が大きい(足りない場合は付加すればよいですが、多すぎる場合は減らせない)こと、根などに直接触れると枯れてしまうこと、水で流れてしまいやすいというデメリットがあります。
有機肥料 分子が大きく複雑な構造で、必要な量が化成肥料に比べて多く、肥料が効くスピードがゆっくりな一方長持ちします。変化が緩やかなので、今すぐ肥料を効かせたい!という場合は適していないものが多いのですが、土を長い目で良くしていくという観点は適しています。
じょうろ 種や芽が流されないよう、また土の養分が流出しないよう、土の跳ね返りが葉につかないよう、優しく水をかけるのに使います。種が小さく浅く蒔くタイプの場合は、霧吹きを使っていただくのがおすすめです。
すのこ コンクリートの上にプランターを置く場合は、温度変化の緩和(特に高温防止)、風通し向上のため、ぜひご準備ください。
その他 手袋、小型のシャベル、はさみ、温度計も、あると便利です。また不織布を使うと、寒い時期の栽培も可能になります。
ー 栽培に適した土 ー
土の性質は、「物理性」「化学性」「生物性」の観点で考えると分かりやすいです。それぞれがお互いに関係し合って、バランスの取れた栽培に適した土になります。手のひらで握ってから崩してみると、手軽に良い土の状態かどうかを判断でき(主に「物理性」「生物性」)、以下のようになる土が栽培しやすい土です。
手のひらでぎゅっと握ると、餃子のように1つに固まる
固まった土を親指で軽く押すと、ほろほろと崩れる

ー 病害虫の対策・対応 ー
病気や害虫が発生したら、病気になった箇所や害虫を取り除くなど、早めに対応することで被害を防げます。また、以下のような観点で発生原因を確認し、環境を整えながら栽培をすることで、発生を防いだり被害を抑えましょう。
🐛病原体・害虫そのものを取り除く 病気や害虫が発生したら、病気になった箇所や害虫を取り除くなど、早めに対応することで被害を防げます。また、以下のような観点で発生原因を確認し、環境を整えながら栽培をすることで、発生を防いだり被害を抑えましょう。
🌱病害虫に強い野菜を育てる 健康的な野菜に育てることで病害虫がいても被害を受けにくい状態をつくります。日当たり、気温、水はけ、肥料、風通しなど、野菜に適した環境を整えましょう。また、特定の病害虫に強い品種を選んで栽培することで、防ぐ方法もあります。
🍃病害虫が好まない環境づくりをする 病原菌は多湿を好むため、不要な葉を取り除く、間引きをする、場所を移すなどして、風通しを良くすることが有効です。また、同じ“科”の野菜を栽培し続けることで、特定の病害虫が付きやすい土になるため、別のものを栽培する工夫も大切です。
🫛豆知識:連作障害
同じ“科”の野菜の栽培を続けると、連作障害と言い、その“科”特有の病害虫の被害を受けやすくなります。“科”を意識して栽培するものを決めると、病害虫が出にくくなります。栽培キットの野菜の科は以下の通りです。
アブラナ科:小松菜、スティックセニョール、菜花、かぶ、ラディッシュ、ターサイ
ナス科:じゃがいも、ミニトマト
ウリ科:バナナウリ
マメ科:枝豆
セリ科:人参、パセリ、三つ葉
キク科:春菊、ベビーリーフ
ヒガンバナ科:玉ねぎ、にんにく、葉ねぎ
ヒルガオ科:さつまいも、空心菜
シソ科:青じそ、赤じそ、スイートバジル
ツルムラサキ科:ツルムラサキ
🫛豆知識:原産地
それぞれの野菜が好む気候は、その野菜の原産地の気候に近いことが多いです。頭の片隅に置いておくと、どんな環境が適しているかを直観的にイメージできます。以下の農林水産省のウェブサイトで主な野菜や果物の原産地を確認いただけるので、ぜひご覧いただければと思います。
ー 野菜の成長サイクル ー
どの野菜も、大まかに以下のような成長サイクルを辿ります。ぜひ、育てている野菜が今どの成長段階にいるのか、どの成長段階でどこを食べるのか、を意識しながら栽培をしてみてください。

ー 栽培の流れ ー
具体的には、それぞれの野菜ごとの栽培方法の確認が必要ですが、どの野菜でも概ね共通している栽培の流れとして、ご覧いただければと思います。
種まき 発芽には、休眠状態から覚めていることに加え、その野菜に合った温度、水、空気が必要です。市販の種は休眠状態から覚ます処理をしてあるものが多いですが、ご自身で種採りをしてすぐにまく場合には注意が必要です。また、種には光を好むもの(好光性)、好まないもの(嫌光性)、どちらでもないもの(中間性)のものがあるため、蒔く時にはこの特性を踏まえて土を被せる深さを決めます。
種まきの前に、土に水をたっぷりかけておきます。可能であれば前日にかけておくと、土と馴染みます。
嫌光性のものは種の長さの2~3倍ほぼ深さに、好光性のものは浅く、もしくは土をかけずに蒔きます。
土と種が密着することで水を吸収できるよう、上から軽く押さえます。
種が流れない程度に軽く水をかけたら、その後は土の表面が少し乾いてきたら水やりをします。
水やり 水分を好む度合いは野菜により異なりますが、基本的には土の表面が乾いてきたら水やりをします。
種や芽が流されないよう、また土の養分が流出しないよう、土の跳ね返りが葉につかないよう、優しくかけます。
水の量は、プランターから少ししみ出てくる程度が目安です。
日差しが強く暑い夏の日中の水やりは避けましょう。土の中で水が高温になり根が弱る、葉についた水に光が集まりしおれてしまうのを防ぎます。
寒い冬場は、夜間の当月を防ぐため、夕方の水やりは避けましょう。
乾燥した日が続いた場合は、葉にも水をかけると虫が付くのを抑えられます。
間引き 蒔いた種は全てが発芽し、順調に育っていく訳ではありません。そのため少し多めに種を蒔き、途中で間引きをしていきます。ちょっと躊躇するかもしれませんが、水分や養分の取り合いによる成長の抑制、風通しの悪さによる病害虫の増加を防ぐため、思い切って間引きしましょう。葉物野菜などは、間引き菜もお召し上がりください。
整枝・誘引 聞きなれない言葉ですが、果菜類と呼ばれる実を食べる野菜の栽培で、必要に応じて行う作業です。
整枝:以下のような目的で、先端や脇の芽を切り取ることです。
花や実の付きを良くする。
風通しを良くする。
限られたスペースで育てやすくする。
誘引:以下のような目的で、茎やつるを支柱やネットに固定することです。
風などで折れてしまわないようにする。
つるを垂直方向に伸ばすことで、限られたスペースで育てやすくする。
収穫 植物は日中に光合成を糖分やデンプンを作り出すため、葉や茎は夕方にかけて甘味や旨味が増していきます。そして夜になると呼吸をし、根か養分を吸い上げタンパク質を作ることで葉や茎を大きく成長させると共に、果実に糖分を蓄えていきます。そのため基本的には、葉物野菜は夕方に収穫した方が、果実を食べるトマトやキュウリなどの果菜類は朝方に収穫した方が、美味しくいただけます。
また、葉物野菜は株ごと収穫をせず、成長点を残して収穫をすると、何度も繰り返し収穫が可能です。
種採り 果菜類と呼ばれる実を食べる野菜は、種採りにおすすめです。以下を理由にご自宅での安定した品質での種採りが難しい野菜もありますが、ぜひ色々な野菜で試してみてください。
別の花、別の株の花粉で受粉をする(他家受粉)野菜の場合、風や虫が運んできた別の植物との受粉で品種が変わってしまう可能性があります。花が咲くタイミングで不織布などを被せると、防ぎやすいです。
ご家庭で栽培する量は少ないため、世代を重ねていくと近親相姦により弱くなっていく可能性があります。
プランターでの栽培は、環境の変化が大きく畑で栽培するよりも難しいため、上手く育たないということもあるかもしれませんが、ぜひそれも含めてかてい農園を楽しんでいただければ幸いです。






