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“味覚”について考える ~メカニズム編~

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2023年6月24日
  • 読了時間: 5分

更新日:2023年10月28日

前回は“味覚”に関するエピソードをご紹介させていただきましたが、今回はメカニズムについてお伝えできればと思います。

特に子どもの味覚形成ということをきっかけに考えた内容でしたが、新ためて子どもに限らず、認識しておくことが大切な内容だと感じたので、ぜひシェアさせてください😊

味を感知し、判断し、記憶するまでの流れ

基本的に、私たちは栄養になるものは「好ましい味」と感じ、有害なものは「嫌な味」と感じ、消化できず栄養にも有害にもならないものの味は感じません。具体的には、以下のようなステップで味を感知し、判断し、記憶をしていっていると言われています。


  1. 味細胞で味を感知する 味を感じる味細胞が数十個集まったものが「味蕾」です。味蕾は、舌、喉、上あごなどに散在しており、味の分子を感知します。

  2. 脳幹を経由し反射的な反応が起こる ここでは唾液の分泌や、好ましくない味だった時に顔をしかめて吐き出してしまうなどの、反射的な反応が起こります。栄養のあるものなのか有害なものなのかという重要な判断に加え、体内に取り入れるか吐き出すかという重要な対応が完了します。

  3. 大脳皮質の一次味覚野で味の強さや質が分析される 感知した様々な感覚は、統合される前にそれぞれの感覚ごとに、その強さや質などが分析されます。味覚についても同様で、味覚単体としての分析が行われます。

  4. 大脳皮質の二次味覚野で匂いや食感などの情報と組み合わされる それぞれの感覚ごとに分析された、味覚以外の様々な感覚情報と組み合わされることで、その食べ物の味のイメージが形成されるのがこの段階です。

  5. 扁桃体で好きか嫌いかなどが判断される 情動反応の処理や短期記憶を司る場所で、好きか嫌いかなどの感情判断に加え、過去の記憶や体験の情報とも照合し、安心して食べられるのかどうかの判断もしています。

  6. 視床下部で食欲を司るホルモンの分泌などが起こる 自律神経の中枢を担う場所で、ホルモンにより食欲のコントロールを行います。

  7. 海馬で味の記憶が形成される 短期記憶を長期記憶へ繋げるための整理を行います。ここで形成された記憶はその後、大脳皮質で長期記憶として保存されます。


この流れを見ていただくと、「2.脳幹を経由し反射的な反応が起こる」「5.扁桃体で好きか嫌いかなどが判断される」という2か所で、好ましい味かどうかが判断されているのが分かります。本来危険を感じる味とされている苦味や酸味は、2においては反射的に好ましくない味と判断される一方で、経験を重ねる中で、その食べ物は美味しいもの、体にいいものなどの情報を学習し大脳皮質に蓄積されている場合は、5においては経験上好ましい味、と判断をするようになっていきます。



「味蕾」で感知する5つの味

5種類の味覚のうち1つの味覚を感知することができる味細胞が、数十個集まって味蕾を構成しています。そのため、1つの味蕾では、5種類の味全てを感知しています。

主に舌の先、側面、付け根、そして喉や上あごの奥などに分布していて、以前は舌の場所によって感じる味が異なると考えられていましたが、現在ではどの場所でもどの味も感じ取ることができると考えられています。

また味蕾は、10~14日程度のサイクルで新しい細胞に生まれ変わりながら、最も多いと言われている乳児期の10,000個ほどから成人では7,000個ほどと、年齢を重ねるごとに徐々に減少していきます。


味蕾で感知している味には以下の5種類があり、それぞれ、私たちの生命に関わる大きな役割を果たしています。


<栄養のサインとなる味覚>

  • 甘味 生物の主要なエネルギー源である糖分を感知

  • うま味 体やホルモンをつくるもとになるタンパク質に多く含まれるアミノ酸を感知

  • 塩味 体液のバランスを保つのに必要なナトリウムイオンなどのミネラルを感知

<危険を検知するための味覚>

  • 酸味 未熟なものや腐ったものに多く含まれる酸を感知

  • 苦味 アルカロイドなどの毒を感知


特に小さな子どもが酸っぱい食べ物や苦い食べ物が苦手なのは、本能的に危険を察知しているためです。少しずつ食べる経験を積むことで、本能的には好ましくない味だったものが、蓄積されていった記憶により美味しいもの、食べられるものになっていきます。

また「辛味」は味覚ではなく、痛覚と言われています。



5つの味の感知方法

特に味覚を感知する仕組みについては、まだまだ未解明のことも多いようですが、5種類の味覚は大きく2パターンの感知の仕方に分類されることが徐々に分かってきています。


<酵素の働きにより感知している味覚>

甘味、うま味、苦味は、それぞれの味の分子と結合できる酵素の働きにより、感知していると考えられています。

そのためこの3つの味は、酵素の働きが活性化する体温ほどの温度においては強く感じ、低温や高温になると弱く感じます。アイスが溶けると甘すぎると感じる、温かいスープが冷めると濃く感じるのはこのためです。


<イオンにより感知している味覚>

塩味は主にナトリウムイオン、酸味は水素イオンが味細胞に入ってくることで、感知していると考えられています。

今回、味覚について理解をしていく中で、改めて生命に関わるとても大切な感覚であり、本能的に備わっている機能の凄さを感じました。

と共に、栄養のサインである甘味、うま味、塩味のある食料の獲得が難しく重要だった時代から環境は変化し、簡単に得ることができるようになっている今、安易に元々備わった本能を頼りにしてしまうことの危険さも感じています。


また、子どもの味覚形成をきっかけに考えた内容でしたが、歳を重ねて味蕾が減って行く≒味覚が鈍化していく中で意識をした方が良いこともあるでしょうし、味蕾の生まれ変わりのサイクルや脳の仕組み、自身の経験を踏まえると、何歳になっても味覚は形成されていくという感覚もあります。


メカニズムを知っていることで、ちょっとした日常の中での意識に繋がる、そんなきっかけになれば幸いです。

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