top of page

日本のお米づくりについて考える ~水田の価値と今後必要となるであろう選択~

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2025年6月22日
  • 読了時間: 4分

更新日:2025年6月29日

先日のブログ「日本のお米づくりについて考える ~のらくら農場 代表萩原さんの言葉をきっかけに~」ご紹介させていただいた、のらくら農場 萩原さんのお米の栽培を休止されるに当たってのメッセージ。その中で、野菜農家であるのらくら農場さんがお米を栽培してきた理由として、“水田”の機能について触れられていました。

今回は、田舎の風景と聞いて思い浮かべる方も多いのではないかと思う、日本の“水田”について、価値と今後の課題について考えてみたいと思います。

日本における水田の歴史

米作り=水田のイメージがありますが、日本に最初に伝来したのは陸稲(りくとう・おかぼ)と言われる、畑で育てる稲だったと言われています。その後、縄文時代後期に水稲と言われる水田で育てる稲と栽培技術が伝来し、弥生時代に少しずつ全国に広がります。そして、古代の律令制度の確立と共に、主に谷筋や山の麓など伏流水を引くことができる一部の地域を中心に、水田が整備されていきます。

そして中世になると、石高を上げるために、各地に作られた山城の周辺に棚田が作られるようになります。その後、近世の安定した時代となると、平地での新田開発、大規模な水路整備が行われ、現在思い浮かべる田園風景に繋がっていきます。


単位面積あたりの収穫量が多い、水田での米作り

水稲は陸稲や小麦などと比較して、主に以下の理由から単位面積当たりの収穫量が多く、日本を含むアジアの人口密度が歴史的に高い背景にもなっています。


<水田では連作が可能>

萩原さんのメッセージの中でも触れられていたのですが、水田では連作障害が発生しないと言われています。連絡障害とは、同じ畑で同じ作物を栽培し続けることで、病害虫や栄養分の偏りが発生し、生育が悪くなることを言います。水田では河川や用水路から水が流れ込むことで、養分の補給、病害虫や過剰な成分の流出が起こることに加え、土の中が酸欠状態になることで有害な微生物や菌類が死滅します。

一方畑では、同じ作物を続けて栽培し続けることが難しいため、休ませたり、他の作物を栽培したりする必要があります。


<稲は1回の栽培での単位面積あたりの収穫量が多い>

同じ面積の水田/畑から、水稲は小麦の約1.5倍の量の収穫が可能です。米と小麦では重量あたりのエネルギーはほぼ同じため、同じ面積での1回の栽培で比較すると、水稲は小麦の1.5倍のエネルギーを得ることができることになります。


水田におけるお米の生産以外の多面的な価値

降水量が多く(特に最近では、短時間強雨が増加)急峻な地形の日本において、水田はお米の生産だけでなく、水災害の防止という観点でも大きな役割を担っています。以下は農林水産省のHPに掲載されている水田を中心とする農業・農村の有する多面的機能ですが、その多くが水田のある地域だけなく流域での水災害の防止に繋がるものとなっています。


※農業・農村の有する多面的機能


今後必要となるであろう選択

単位面積あたりの収穫量が多い水田での稲作ですが、一方で水の管理を含む栽培には相対的に手間がかかることから、最近では陸稲の品種改良、関連資材の開発が進んでいます。特に大規模に栽培をしている経営体を中心に、水田ではなく畑で行う稲作が、徐々に増えてきています。

また地域で水田を維持し続けるためには、農家単体での管理だけでなく、地域での水路や畔などの整備が必要となります。水量の調整、どうしても溜まってしまう泥の水路からの搔き出し、詰まりや漏れが発生している箇所の補修など…。これまでの歴史の中で日本の農地に張りめぐらされた水路網は約40万km(地球10周分)にもなり、維持管理には地域内での合意形成に加え、多大なコストがかかります。

前述のような背景から、生産者の減少やそもそもの人口減少に伴う水田の減少に加え、今後はお米の効率的な生産は平地の“畑”で行われ、“水田”は流域における水災害の防止、文化の継承やそれに伴うツーリズムなどの観点で、どの範囲で残していくのか?という選択が迫られていくのではないかと考えています。


※作物別の経営面積、経営体数予測

農林水産省 「基本計画の策定に向けた検討の視点 我が国の食料供給(農地、人、技術)」より作表
農林水産省 「基本計画の策定に向けた検討の視点 我が国の食料供給(農地、人、技術)」より作表

野菜よりも一足先に大きな転換期を迎えているであろう、日本の米作り。主食ではないという観点でお米と同じ波が来るとは言い切れませんが、今後の野菜など他の作物における変化を想定する材料になり得ると考えています。また、これまでに保けん野菜でのお米の扱いについて検討をしたことがあるのですが、今後の変化の方向性を鑑みて、改めて検討をしていきたいと思います。

最新記事

すべて表示
世界で生産が拡大する“穀物”としてのとうもろこし

私たちに馴染みのあるとうもろこしはスイートコーン(甘味種)と呼ばれる“野菜”として食べるもので、とうもろこしの1%にも満たない生産量です。世界で生産されているとうもろこしのほとんどがデントコーン(馬歯種)と呼ばれる“穀物”としてのとうもろこしで、年々生産量が拡大しています。この“穀物”としてのとうもろこしについて、お伝えさせていただければと思います。 とうもろこしの種類 まずは簡単に、とうもろこし

 
 
古代中米から始まるとうもろこしの歴史

開催まで1ヶ月ほどとなった、今年の「コーン期 夏の風物詩 ー野祭ー」。開催に向けて、今週から何度かに渡り、とうもろこしにまつわるブログをお届けできればと思っています。 初回のとなる今回は、古代マヤ文明やアステカ文明などでは農耕の神様として崇められていた、とうもろこしの歴史を紐解いてみたいと思います。 メキシコ マヤ文明の古代都市カラクルムに残る壁画の一部 (とうもろこしの蒸し物やお粥など、とうもと

 
 
ないとう農園さんの野菜をふんだんに使った、くろねこ庵のおばんざいのご紹介

以前のブログ「おばんざい処「くろねこ庵」ポップアップストアが2日間限定でオープンします」でご紹介をさせていただいた、ゴルゴさんが店主を務めるおばんざい処「くろねこ庵」が、6/26(金)、27(土)の2日間、ポップアップストアをオープンされ、ないとう農園さん(埼玉県伊奈町)の野菜をふんだんに使ったおばんざいを中心にご提供されました。本日は、メニューを決めてそれに必要な野菜を注文するのではなく、普段皆

 
 
bottom of page