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日本の“肥料”の現状を考える ~昨今の中東情勢をきっかけに~

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 4月5日
  • 読了時間: 4分

昨今の中東情勢の影響を受けて、原油やナフサの調達について様々な報道がされていますが、農業においても窒素肥料の原料となる尿素やアンモニアの約3割が中東・湾岸地域から輸出されていることもあり(うち、ホルムズ海峡を通過するのは1/3ほど)、肥料価格の高騰や生産量の低下懸念などのニュースも目にするようになりました。

そのような報道を目にする中で、健全に懸念に向き合い準備をすることが必要な一方で、冷静に日本における“肥料”の現在地を見ておく必要があると感じています。今回は、日本における“肥料”の現状として私自身が捉えていることをお伝えさせてください。

植物の成長に必要な主な栄養

野菜の成長に必要な肥料の成分の中でも、特に多く必要とされているのが、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の3つです。家庭で栽培をしたことがある方は、肥料袋の裏側などでこの成分の記載を見たことがあるかもしれません。


これらの成分は、堆肥などの有機物の中にも含まれている一方で、堆肥にはそれ以外の成分も多く含まれているため単体の栄養素で考えると非効率だったり、畑への投入に手間がかかったり、じわじわと効いてくるためにコントロールがしにくかったり、特定の栄養素を畑に投入したい時に使い勝手が悪かったり…、効率よく計画的に大量に農産物を作るには化学肥料に劣る部分が多いのが実情です。化学肥料はその原料のほぼ全てを輸入に依存していますが、前述のような背景で利用が拡大してきました。


日本で使用している肥料の輸入比率・輸入相手国

一方で、脆弱性の高い輸入依存の状態からの脱却を目指して、国内肥料資源(家畜糞や食品残渣などから作られる堆肥や下水汚泥など)の利用拡大も進めています。直近の実績数値は見つけらなかったのですが、繋がりのある農家さんが下水汚泥から作った堆肥を利用しはじめたり、家畜糞や食品残渣活用の動きを多く耳にしたりしている定性的な情報からは、少しづつ利用拡大が進んでいるのを感じています。


また化学肥料原料の輸入相手国も、特に2021年以降大きく変化をしており、中国、ロシア、中東などの依存度を下げ、分散化が進められています。


これを見ると、直ちに日本で利用する肥料の確保に甚大な影響があるとは考えにくいのではないかと思います。一方で、例えば以下のような懸念は、前述の数値からは見えない懸念として存在していることに加え、価格の高騰や、これまで通り購入ができるのか?という買い負けの可能性はぬぐい切れません。

  • 国内肥料資源の多くを占める家畜糞も、遡っていくとその餌となる飼料は多くを輸入に依存している。

  • リン鉱石から肥料を製造するには、原油の精製時に回収される硫黄を利用。中東も硫黄の輸出量が多く、間接的にリンの確保への影響が出る可能性がある。


今後の農産物の価格上昇の可能性

直近の中東情勢の変化以前から続く物価上昇の影響を受けて、農業においても肥料を始め様々な資材のコストが上昇しています。今後、中東情勢の緊張状態が継続すると、他の産業と同様に包装資材や輸送費の上昇が考えられることに加え、肥料の価格上昇(化学肥料の価格が上がると、有機肥料のニーズが高まり有機肥料の価格も上がるようです)など、生産コストがもう一段上がることも想定されます。

農産物は他産業に比べて価格転嫁が進んでいない(帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2025年7月)」によると、価格転嫁率の全業種平均39.4%に対し、農・林・水産業は26.7%)ことを鑑みると、経営の継続可否を迫られる経営体の更なる増加、これまで転嫁し切れていない分も含めた価格上昇など、農業や食生活を取り巻く環境への影響も少なからず出てくるのではないかと考えています。 今のような状況を明確に見越してという訳ではないかもしれませんが、長い時間軸で考えた時にあるべき形として、地域資源を積極的に活用した農業の形を構築されていっている、のらくら農場さん、ないとう農園さんのような農家さんが、これまでの積み重ねにより現時点で何とか乗り越えることができているということなのかもしれません。

保けん野菜では、このような農家さんの工夫や経営努力では飲み込み切れないコスト上昇を見越して、先んじて皆さんから一般的な価格よりも高い金額を頂戴することで、農家さんにきちんとお支払いすることができていると認識しています。皆さんのご理解に感謝をするとともに、これが農家さんの、私たちの食の未来を良くする原動力になるよう、広げていきたいと思います。

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