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流通を担う皆さんと農業を考える会 ~“規格外”野菜を考える~

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2025年3月8日
  • 読了時間: 7分

更新日:2025年3月8日

前回のブログでは、2/28(金)に開催をした野菜の流通を担うバイヤーや経営者の皆さんにお越しいただいたサムライバイヤーの会での、議論テーマとその背景をご紹介させていただきました。今回は、その中の一つ『"ちょうどいい"農産物の規格づくりを考える』のセッションの中で議論をした“規格外”野菜について、私自身の考えをお伝えさせてください。

今、野菜が高い背景

“規格外”の前に、まずは今回の議論のきっかけにもなった、特に去年~今年にかけて顕著な野菜の品薄と、その影響を受けての高値について、背景をお伝えさせてください。色々な理由が複合的に影響していると思いますが、主な理由としては以下の2つだと考えています。


高温、旱魃、局所的な豪雨などによる不作

例えば、特に高騰が目立つキャベツは、ヨトウムシという蛾の幼虫などによる食害の影響が大きいと言われています。秋になってもなかなか気温が下がらず、虫の活動が活発な状況のまま、収穫したいタイミングから逆算をした種蒔きの時期を迎えてしまい、種を蒔いても食べられてしまう、もしくは種を蒔けない、ということが複数の産地で起こっていたと言われています。また、のらくら農場さん、ないとう農園さんでも、同じ状況というお話を伺っています。

恐らくこの傾向が続いていくであろうこと、変化の加速度が大きくなる可能性を考えると、栽培のタイミングや育てる野菜そのものの見直し、経営そのものの見直しなど、これまで以上に変化し続けることが農家さんに求められていくと考えています。

今回の会の中でも、以下のような話が出ていました。

  • 西日本の農家さんとのお取引が多いが、暑さの影響で2ヶ月間収穫ができない時期があった。また、栽培できる野菜が限られてきたのか、野菜のバリエーションが減ってきたと感じる。

  • 感度が高い農家さんは、高温での栽培が合う野菜の栽培を始めるなど、変化を始めている。果樹のように収穫までに数年かかるものを栽培している農家さんは、特に危機感を感じている方が多く、これまでとは違うものを栽培し始めたという話を多く耳にするようになった。(ウメ→キウイ・アボカド、リンゴ→モモ・ブドウなど) ※参考:温暖化に対応したミカンとアボカドの適地予測マップ(農研機構)

  • そもそも多品目栽培をベースとしている農家は、これまでも常に状況に応じて栽培するものを変えてきた。農家の変化が問われている。


以前お送りさせていただいた以下のブログでも、気候変化に伴う栽培の変化について記載しております。もし宜しければ、併せてご覧いただければ幸いです。


数年前から続く資材や輸送費などのコスト高騰

農業生産資材には、種、肥料、農薬などの他、軽トラやトラクターに利用すガソリン、ハウス温度管理などの電気、ネットやマルチ、段ボールなどの消耗品、ハウスや出荷場などの建設に利用する資材など、様々なものがあります。化学肥料のほぼ100%、種の90%以上を輸入に頼り、またエネルギー自給率も低い日本では、資材コストが2020年を基準として1.2倍ほどの状況が続いています。

また輸送費の上昇も重なり、特に容積の大きいキャベツや白菜などの価格に大きく影響しています。

農林水産省 農業生産資材価格指数より作図
農林水産省 農業生産資材価格指数より作図

加えて今後は、最低賃金のアップや社会保険の適用範囲拡大など、人件費の上昇も見込まれています。これらの背景を踏まえると、時期などによる価格の上下はありながらも、全体としては当面価格が上がっていくのではないかと考えています。 ※保けん野菜では、現在のような状況を一定見込んでの価格を設定させていただいており、一般的な価格よりも高い値段で野菜を農家さんから購入し、その分皆さんにもご協力いただいております。


“規格外”野菜とは

これまで通りの野菜の栽培がしにくいことを考えると、いわゆる“規格外”と呼ばれるものが増えたり、野菜の値段が高くなっているため“規格外”のものを手頃な価格で購入したいという方が増えているかもしれません。

まずはこの“規格外”野菜とは何か?をご説明させてください。


野菜の流通

保けん野菜では農家さんから直接皆さんへ野菜をお届けしていますが、国産青果の約80%は卸売り市場を経由して流通しています。卸売市場での委託販売では“全量引き受け”が原則とされていて、市場に持ち込まれた野菜は全て受け取り、卸売業者が販売を引き受けることになります。

野菜の“規格”

“規格外”野菜と聞くと、全国統一の規格があるように聞こえるかもしれませんが、形や大きさなどを全国統一で規定した規格は現在では存在しません。野菜は工業製品とは異なり一つひとつ個体ごとに形や大きさなどが違うため、“取引先ごと”にどのような野菜を納品するかを設定しています。

ただ、前述の通り80%が卸売市場を経由した流通となるため、市場取引での規格というのが一般的にイメージされる野菜の規格という事になるかもしれません。野菜の品質の担保や大量の野菜を効率的(サイズや形が揃っていることで1箱に入る数を増やせ、輸送コストを抑えられる、など)でスピーディーに流通させることなどを目的に、生産者の代表である生産部会、JA、卸売会社が購入者である小売店などのニーズなどを踏まえて設定している、以下のようなものです。

出荷規格表|JA全農 広島県本部
出荷規格表|JA全農 広島県本部

そのため、農家により、取引先により、“規格外”となる野菜は異なってきます。


“規格外”野菜について思うこと

前述の通り、“規格外”には統一の基準がある訳ではなく、各販売先との交渉の上で設定することになります。特に市場に出すものについては、効率的な流通という観点から形や大きさが細かく規定されているため、その規格に合致しない野菜が畑に捨てられるのはもったいない!という観点から、“規格外”野菜が注目されるようになったのではないかと思っています。

ただ、例えばきゅうりを事例にすると、多少曲がっていたり大きくても、味に問題が無ければ使い手にとって何も問題が無いという場合は安くではなく通常の価格で購入するのが良いのではないか?と思いますし、曲がったきゅうりは1箱に入る数が少なくなるので真っ直ぐ計算をすると値が高くついてしまいます。 ここからは全ての“規格外”に当てはまる訳ではないかもしれないものの、私自身が農家で働いたり、農家の方にお話しを伺う中での“規格外”についての認識をお伝えさせてください。


  • 畑に捨てられる野菜の多くは“規格外”が理由ではない これはデータが出ている訳でないのですが、農家さんの話、野菜の需給情報、農家で働いた感覚などから、「市場価格が安く出荷しても赤字になってしまう」「天候不順や病害虫などの被害を受けた」というケースが圧倒的に多いのではないかと思っています

  • 畑に捨てる=土に還る 畑に捨られると聞くと勿体ないと感じるかもしれません。ただ、捨てた野菜は畑で土に還ります。もし流通~消費のどこかで余り焼却処分をされるのであれば、畑で土に還った方がずっと良いのではないかと思います。

  • 収穫や出荷にも手間がかかる キレイに出来た野菜よりも収穫にも出荷のための調整にも手間がかかります。もともと利益率が低い経営状態においては、追加の工数をかけることが難しく、さらに安い価格で販売するのは経営の持続性を失うのではないかと思っています。

  • 形が歪なものを加工品にするのは簡単ではない 加工品は土などの混入を徹底的に防ぐため、例えば根菜であればしっかりと皮を剥きます。そのため形が歪なものは、手間がかかることに加え、可食部が少なくなってしまいます。もちろん不可能ではないのですが、加工会社としては極めて安い価格で仕入れる、もしくは高価格な商品とする必要があります。


また今回の会でも、カタログでの販売における、“規格外”の悩ましさとして以下のような悩ましい事例を伺いました。良かれと思っての“規格外”の販売が、結果的にマイナスとなってしまうケースかと思います。

  • 粒が大きな巨峰100房に加え、粒が小さな(大きく育たなかった)巨峰も50房仕入れ、後者は特集として「農家さんの応援」商品としてカタログで販売。

  • それぞれの注文が100房ずつ来た場合、特集として販促をした「農家さんの応援」商品を品切れにする分けにはいかず、以下の通りお届け。

    • 1房3,000円の巨峰の注文:粒の大きな巨峰50房をお届け、50房分の注文は欠品

    • 1房2,900円の「農家さん応援」の巨峰:粒の小さな巨峰50房に加え、不足分は粒の大きな巨峰50房をお届け

世の中にある“規格外”を謳った商品が全て良くないということではないと思うのですが、本当に購入者の意図が反映される結果を生むものなのか?ということは、一歩立ち止まって考えてみる価値があるのではないかと思っています。



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