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美味しさが増す火の通し方

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2023年7月1日
  • 読了時間: 5分

2年ほど前、のらくら農場で働いていた1年ほどの間、2~3週間に1回の頻度でまかないを作っていました。そして、この頃から圧倒的に作る頻度が増えたのが、野菜を焼くだけ、蒸すだけ、など、火を通すだけの料理です。


今回は、火の入れ方次第で圧倒的に美味しくなるということを実感したのきっかけに、どうやったらより美味しくなるか?を試したり、何が影響しているのか?を調べたりしながら、私の中で行き着いた現時点での答えをご紹介させてください。

結論自体は、皆さんも普段から実際にやっているようなことではないかと思いますが、なぜそうなのか?について、私自身がしっくりきた内容をお伝えできればと思っています。

のらくら農場のまかない

まず、のらくら農場のまかないについて、少しだけご紹介させてください。

のらくら農場では、代表を含むスタッフが毎日当番制で、全員分の昼食を作り、皆で食べています。朝から炎天下で体を動かしているスタッフの体と心を癒す重要な役割を担っているので、繁忙期には20人前近い料理を1時間ほどで作りあげるスピード勝負である一方で、味や品数にもしっかりこだわりたい、そんな思いでキッチンに向かいます。


そんなまかない当番を何度か重ねる中で、もう1品作りたいけどコンロが空いていない…、というタイミングがありました。その時に作ったのが、魚焼きグリルで加熱した夏野菜のグリル。これがとても美味しく、野菜そのものが美味しいことに加え、より一層旨味と甘味が増しているように感じました。その時をきっかけに火の入れ方によって味がどう変わるのか?を試したり、調べたりするようになりました。

のらくら農場のまかない

旨味・甘味に関わる成分

前述のグリルによる味の変化の中で際立っていた、旨味、甘味について、まずは改めてどんな成分によるものなのかを整理しておきたいと思います。


<旨味> 旨味をもたらす成分は、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などが代表例です。グルタミン酸はたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中の一つ、イノシン酸とグアニル酸はRNAを構成している成分です。 野菜とたんぱく質はイメージが結びつきにくいかもしれませんが、多くの野菜において、水分、炭水化物の次に多く含まれているのがたんぱく質です。たんぱく質は分解されるとアミノ酸となります。

<甘味> 甘味をもたらす成分は、炭水化物の一種であるショ糖、ブドウ糖、果糖などが代表的です。炭水化物は分子構造の大きい順に、吸収のできない食物繊維、分解をして吸収するでんぷんなどの多糖類、さらに分子構造の小さな少糖類、分解をした最終形態である単糖類、に分けられます。甘味を感じるのは、主に少糖類、単糖類と呼ばれるものです。 多くの野菜において、90%以上を占める水分の次に多く含まれている炭水化物ですが、食物繊維の他に、でんぷん、果糖などの形でも存在しています。


加熱により起こる変化

次に加熱をすることにより、なぜ旨味、甘味が増すのか、どのような変化が野菜の中で起こっているのかを、考えてみたいと思います。


<旨味> 旨味が増す理由は、主に3つあるのではないかと考えています。 ①閉じ込められていた旨味成分の素が出てくる 加熱することで細胞壁(食物繊維のため吸収できない)が壊れ、たんぱく質やRNAが外に出てくる。 ②旨味成分が生成される たんぱく質やRNAが酵素により加水分解(水分が必要)されることで、旨味成分が生成される。 ③異なる旨味成分の相乗効果 異なる旨味成分が組み合わさると、旨味が増す(旨味を感じる味蕾に旨味成分が留まりやすい状態になる)という特性により、旨味成分の増加以上に旨味を感じやすい状態になる。

<甘味> 甘味が増す理由は、野菜によってそれぞれ異なりますが、主に3つあるのではないかと考えています。 ①閉じ込められていた甘味成分が出てくる 加熱することで細胞壁(食物繊維のため吸収できない)が壊れ、中に含まれている甘味成分が出てくることで、味覚として感じられる状態になる。 ②甘味成分が生成される 炭水化物の一種であるでんぷんが水分と加熱により糊化(α化)し、さらに酵素により加水分解(水分が必要)されることで甘味成分が生成され増加する。 ③甘味を打ち消していた成分が無くなる 甘味を打ち消していた硫化アリル(玉ねぎなどに含まれる成分)などの辛み成分が、加熱により変化し辛みを失う事で、もともと存在していた甘味を感じやすい状態になる。


適切な温度帯

ここまでで、旨味、甘味が増す仕組みをご紹介させていただきました。最後に、前述の反応が上手く進むための温度帯をお伝えできればと思います。それぞれの野菜に含まれる成分により差はありますが、ざっくり全体を捉えると…、という前提で参考にしていただければと思います。


<細胞壁を壊すには【66~70℃以上】> 加熱により細胞壁を壊すには、66~70℃以上が必要と言われています。 <旨味成分の生成には【10~70℃】> たんぱく質を分解する酵素が最も活性化するのは10~50℃と言われています。一方で60~70℃以上で非活性となってしまいます。 <甘味成分の生成には【65~70℃】> デンプンの糊化が行われる57~70℃、分解をする消化酵素が最も活性化するのは65~75℃、75℃を超えると非活性となると言われています。 <辛みを飛ばす温度は【気にしなくてOK】> 玉ねぎなどに含まれる硫化アリルは熱に弱いため、飛ばすための温度は気にしなくてOKです。


美味しさが増す火の通し方

だいぶ説明が長くなってしまいましたが、結論は至ってシンプルで以下の通りです。

水分を逃がさないように、じっくりと火を通す

そのために、弱火~中火の火加減での加熱ということに加え、以下のような対応で、水分のを保ちながら急激な温度変化を防ぎやすくなります。

  • 蓋をする

  • アルミなどで包む

  • 皮ごと調理する

  • 薄く油などでコーティングする

  • 具材は大きめにする

今回は、私自身が野菜に火を通す時に意識していることをお伝えさせていただきましたが、皆さまの中にも「こんな工夫でぐっと美味しくなるよ!」というようなものが、それぞれあるのではないかと思っています。もしそのようなものがありましたら、ぜひ、LINEなどで教えていただけたら幸いです。

なぜそうなるのか?を調べたり試したりしながら、皆さんにシェアさせていただくことで、知見として積み重ねていけたらと考えています。

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