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農業における社会保険の変化

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2024年11月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:2025年2月9日

会社員として勤務をしていると、多くの場合当たり前のように一部を企業が負担して支払っている社会保険ですが、特定の業種では個人事業所の従業員は社会保険の強制加入の対象外となっています。農業もこの“特定の事業”に該当しているのですが、現在、この例外撤廃に向けた議論が進んでいます。今回は社会保険の変化と、今後の動きについてお伝えさせてください。

現在の社会保険の適用対象

2016年から進んでいる社会保険の適用対象拡大の動きですが、“働く先”と“働き方”の組み合わせで、対象が定められています。


<働く先>

経営形態・従業員数・業種により、社会保険の強制適用となる事業所が以下の通り定められています。(図の赤実線枠内)

  • 常時1名以上使用されるものがいる、法人事業所

  • 常時5名以上使用されるものがいる、法定17業種に該当する個人事業所


法定17業種に該当しない以下の非適用業種では、常時5名以上使用されるものがいる個人の事業所であっても、強制適用の対象とはなりません。

農業・林業・漁業、宿泊業、飲食サービス業、洗濯・理美容・浴場業、娯楽業、デザイン業、警備業、ビルメンテナンス業、政治・経済・文化団体、宗教 等

また、強制適用の対象外であっても、労使の合意により社会保険の適用事業所となることも可能です。(図の赤点線枠内)

2024年5月28日「第6回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」資料より抜粋
2024年5月28日「第6回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」資料より抜粋

<働き方>

長らく社会保険の対象はフルタイム、もしくはそれに近い労働者(労働時間が通常の3/4以降の労働者)にのみ適用されてきましたが、2016年10月以降、以下の条件を満たすパートタイムなどの労働者へも適用が広がってきています。

  • 所定労働時間が週20時間以降

  • 所定内賃金が月8.8万円以上

  • 2ヶ月を越える雇用見込みがある

  • 学生でない


2016年10月からは厚生年金保険の被保険者数が501名以上の企業等(法人、個人事業所含む)が、2022年10月からは101名以上の企業等が、そして2024年10月からは51名以上の企業等が、上記のパートタイムなどの労働者への社会保険の適用対象となっています。最近耳にすることが増えた、社会保険料に関する“106万円の壁”は、この月8.8万円×12カ月≒106万円のことです。


社会保険の適用対象業種の変遷

社会保険は大正11年(1922年)に健康保険制度が創設され、その後ほぼ同様の適用範囲として厚生年金保険制度が誕生しました。当初は、保障の必要性がより高い過酷な工場労働や鉱山労働などが対象業種として設定され、戦中・戦後の労働力逼迫期に保障の充実が図られていく中で、徐々に対象業種が追加され、前述の現在の対象業種へと変遷しています。

ただし、令和2年(2020年)に仕業が追加される前の対象業種の追加は、昭和28年(1953年)の土木、教育・研究、医療、通信・報道、社会福祉業の追加にまで遡り、70年以上ほとんど変わっていません。

そして冒頭に記載の通り、現在、農業を含むこの例外業種の撤廃が現実的になってきています。


農業への影響

資材や運送料などの高騰の影響を既に受けている中、さらに社会保険の適用対象となることで給与の15%ほどが追加で負担となるため、経営者にとってはかなりインパクトのある変化となります。一方で働く個人のことを考えると、社会保険の歴史や現在の状況を鑑みて、対象外となっている業種こそ対象にした方が良いのではないかという感覚を持っています。 今回見込まれている変更により新たに社会保険の適用対象となる事業者数は、1,034(構成比0.1%)、販売金額に占める割合は5%未満(2020年農林業センサスより概算)と限られてはいますが、更に人数に限らず対象となってくる可能性を考えると、経営を続けられる経営体がかなり絞られてくるだろうと想定しています。

今回先んじて対象となる経営体を筆頭に、価格への転嫁、生産性の向上、新たなビジネスモデルの構築など、様々な変化が求められるタイミングなのかもしれません。


※農業における経営体構成(「2020年農林業センサス」より)

  • 法人:2.9%

  • 個人事業主(5名以上):0.1%

  • 個人事業主(5名未満):97%

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