日本のお米づくりについて考える ~のらくら農場 代表萩原さんの言葉をきっかけに~
- 秋山 智美
- 2025年6月8日
- 読了時間: 6分
現在私が住んでいる山梨県南アルプス市では、田植えの時期を迎えています。我が家でも祖父母から受け継いだ田んぼで父が細々と米作りをしており、昨日、田植えを行いました。
去年から続くお米の価格上昇や場合によっては入手困難な状況に、皆さんの中にも困られた(困られている)方がいらっしゃるかもしれません。
そのようなタイミングではあるのですが、のらくら農場さんでは今年からお米の栽培を小麦と併せてしばらくお休みすることになりました。今回から何度かに分けて、野菜をメインで栽培されているのらくら農場さんがこれまでお米の栽培を行ってきた理由、そして休止する背景から、日本の米づくりについて考えてみたいと思います。

初回となる今回は、今年からお米の栽培を休止することになった、のらくら農場 代表 萩原さんからのメッセージを、少し補足を交えながらご紹介させてください。
お米を収穫するまでのおおまかな流れ
まずは、お米を収穫するまでの大まかな流れをご紹介させてください。地域や農家さん、栽培方法により異なりますが、一般的な流れと主に使用する機械や設備を記載しています。
<田んぼの準備>
稲刈りをした後、稲わらを田んぼにすき込んでから、冬を迎えます。 機械:トラクター+ロータリー
春になったら必要に応じて肥料を施し、耕します(田起こし)。 機械:肥料散布機、トラクター+ロータリー
水を入れる前に、水が漏れないよう畔を整えます(畔塗り)。
田んぼに水を張り、撹拌することで泥状にします(代搔き)。 機械:トラクター+ハロー
※トラクターは単体では牽引車としての役割しかなく、様々なアタッチメントを後部につけることで、多様な作業を行います。
<苗づくり>
籾殻に包まれた状態の米(種籾)を塩水に入れて選別したら、発芽を揃えるために水に浸けて吸水させます。
ぬるま湯に漬けて発芽をさせたら、苗床に種を播きます。
温度管理、水管理を丁寧にしながら、苗を育てていきます。 設備:ビニールハウス
<田植え・栽培管理>
田んぼの準備、苗づくりが整ったら、田植えをしていきます。 機械:田植え機
田植え後は、生育タイミングに合わせた水管理を行います。
また田んぼだけではなく、水を入れるための用水路の管理も地域で行います。
必要に応じて、肥料の追加(追肥)、雑草や病害虫の管理を行います。
<収穫・精米>
秋になり収穫の時期を迎えたら、乾燥しているタイミングを見計らって収穫、脱穀をします。 機械:コンバイン
収穫をした籾は保存性を高めるために乾燥させたら、選別をします。ライスセンターなど共同利用施設で行うことも多い作業です。 機械:乾燥機、選別機
最後に精米をして、食べられる状態となります。 機械:精米機
このタイミングで休止することになった背景
前述の通り、お米作りには沢山の機械を使用します。もちろん、それぞれ手作業で行うことも可能ですが、労働時間が10倍以上かかると言われており、なかなか現実的ではありません。そんな中、お米と小麦の栽培にのみ使用していた2つの機械が壊れたのを機に、お米、小麦の栽培を休止することになったとのことです。
農業を始めた年から細々ですがお米を栽培してまいりました。田植え前に水田の泥をかき混ぜて水漏れを防ぐ「代搔き」という作業があります。この作業機械のドライブハローが壊れました。中古で買って25年も稼働してくれたので、頑張ってくれました。むしろよくここまでもってくれたというべきです。同時に収穫の時のコンバインもかなりガタが来てついに修理をあきらめるときに来ました。この子(コンバイン)も頑張ってくれました。今、機械はかなり高騰しておりまして、同じ機種が5年前に比べて1.5倍くらいになっております。お米部門は単一でみると正直赤字(笑)。今お米が高騰していますが、お米農家さんからすると今までが安すぎて、この値上がりで回復まで行かず、一息つく程度が現状です。
野菜農家がお米を栽培し続けてきた理由
野菜づくりとは違う機械を揃えなければいけないにも関わらず、お米を作り続けてきたのは、1つひとつの栽培品目単体ではなく、副次的な様々な効果をトータルで考えてとのこと。加えてここへの記載はないですが、農家として食を担う以上、日本における食の基盤であるお米を作らない選択肢はなかったという旨も伺っています。
しかし、お米はただお米だけを作っているわけではなく、もみ殻、わら、米ぬかなど副産物がとても役に立ちます。また、水田の一部のお米栽培をお休みして、ナスを作ると、ナスが病気知らずです。水田というのは素晴らしい機能で、連作障害というものをなくしてくれます。(毎年同じ作物を作っていると、そこに病害虫が集まりやすくなることを連作障害といいます。水田は2000年連作しても連作障害がないのです)ですので、単一部門としては赤字でも、畑への循環という面で、トータルとして稲作がのらくら農場でも大変役立ってくれてきました。つくづく農業はトータルですね。
今後のお米づくりについて
今回、一度休止はするものの、お米づくりはトータルとしてとても価値があることも踏まえ、改めて何らかの形で復活することを考えていらっしゃるとのこと。私自身、数年前に農家で働き始めるに当たり、お米の生産を生業とした場合の収益をシミュレーションしたことがあるのですが、相当な規模で相当な投資をして行わない限り、単体で成り立たせるのは難しいということを目の当たりにしました。復活に向けては多くの乗り越えなくてはならないことがあると思いますが、きっと何らかの形で再開されるのではないかと思っています。
ここで一度、お米栽培をやめてみます。今まで買い支えてくださったお客様には大変申し訳ありません。復活は考えてはおります。やるとするなら、もっと面積を多くやると思います。そして、近隣のお米農家さんに一部の作業委託をするなど、今までとは違うやり方を構築する必要があります。お米の単一部門でも利益が出るように、知恵を絞ってみます。 (中略) 発展的解消という言葉があります。今回はまさにそれでして、野菜はまだまだ馬力を上げていきますし、穀類は一度仕切りなおすという判断です。 今までも、気候変動や野生動物の被害が拡大して、大豆や花豆など、いろんなものに挑戦して、またやめてきました。実は今でも、毎年のように新しい品目に挑戦し、何かを縮小したりやめたりの、細胞の入れ替えは行っております。何かをやめるたびに、次の飛躍がありました。 お米不足の折に、大変申し訳ありません。農家の減少は加速していきます。佐久穂町も11年以内に6割の農家がいなくなることがほぼ確定しています。それを、決して暗い話にしないためには、新しい芽吹きを生む必要があります。その芽は力強いものにしたいものです。のらくら農場は、力強く元気に皆さんに農産物をお届けできるように全力を尽くしたいと思います。
次回以降、昨今のお米の価格上昇や備蓄米の放出、そしてのらくら農場さんの決断を踏まえて、日本のお米づくりについて考えてみたいと思います。








