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いつか・どこか・だれか いま・ここ・わたしたち

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2024年1月27日
  • 読了時間: 4分

先日、のらくら農場さんと目と鼻の先にある山小屋“森の時間”をお借りして、窯焼きを通じた体験の実験を行ってきました。この体験の場は、今後、実験を重ねた上で皆さまにもご案内していきたいと考えています。今回はこの体験の概要、実験当日の様子と私自身が体感したことをお伝えさせてください。

大量生産の陶磁器も、唯一無二の一品へと生まれ変わらせることができる移動型窯

まずは、この体験で利用している窯についてご紹介させてください。

陶磁器は日本国内だけでも年間58,344,424 kgが制作され、世界ではさらにそれ以上がつくられている。大量生産された陶磁器のほとんどが使われることなく廃棄される。我々の窯を使用すれば、廃棄又は未使用の陶磁器を新たに「唯一無二」の一品に再生することができる。この窯は持ち運び可能であり、熟練陶芸家の指導があれば誰でも扱うことができ、炭や木を燃料に2~3時間使用することができる。1300℃以上の熱の中で炭と木が溶解し、陶磁器に定着することで、自然の力による新たなデザインが生まれる。完成した陶磁器には製作者独自の新たな価値が加わるのである。これらの陶磁器は大量生産されたものではあるが、再び火を通すことによって生まれ変わることができる。大量生産品と唯一無二の一品は相反する概念であるが、この窯はそのギャップの架け橋となる。 LEXUS DESIGN AWARD 2017 HPより抜粋

焼き直しの際の温度や湿度、時間はもちろん、どんな炭を使うのか、何と一緒に焼くのか、元の釉薬や柄はどのようなものかなど、様々な要素が複雑に絡み合い焼き直し後の風合いが変わってきます。そのため、焼き直し後にどのような作品にしたいかという意志を込めることはできても、実際にどのようになるのかは陶芸のプロでも予測ができないと言われているそうです。


標高1,000m、雪が舞う中での実験当日の様子

焼き直しには窯の中を1,300℃以上にする必要があるのですが、高温にするには不利な環境下で実現できるのか?を確かめるべく、標高1,000mと酸素濃度が低く、雪が舞うほどの寒さの中で、実験をしてみることにしました。


焼き直し前の食器

今回焼き直しをしたのは、100円均一ショップで入手した大量生産のこちらの食器です。これを、この場所で、今回の焼き直しでしか作ることのできない、唯一無二の作品に生まれ変わらせていきます。


焼き直し

食器を窯に入れ、窯に空気を送り続けながら、窯の中の温度を上げていきます。炭の大きさや入れるタイミングを図りながら、窯と向き合い続けます。


温度が上がってくると、煙突から勢いよく炎が噴き出し、蓋の隙間からもオレンジ色の炎が漏れ出てきます。酸素が薄く、気温が低い中環境のため、少し油断をすると窯の温度が下がってしまいます。そのため、窯の様子を見ながら絶え間なく炭を入れ続けていきます。窯の中の食器の温度も上がり、オレンジ色になっているのが確認できます。


焼き上がり

無事、温度が上がり焼き上げることができ、今回作り上げられた作品がこちらです。細かな亀裂がもともと入っていたのか、1枚は割れてしまったのですが、それも含めて予測できない一品となりました。


窯焼き後の炭を使って食事

焼きあがった後は高温になった炭を使って、のらくら農場さんの長芋、小松菜、赤かぶ、そして農場スタッフの方が業務時間の合間を縫って作ったお餅を網の上で、玉ねぎをアルミホイルで包んで炭の中で焼いていただきました。普段からいただいている野菜ですが、窯焼きを終え寒空の下で炭で火を通して食べる野菜は格別でした。


窯焼きを通じて体感したこと

今回の実験後、改めて陶磁器の表情を左右する釉薬について調べてみると、ガラス質のベースとなるケイ酸、定着させるためのアルミナ、溶ける温度を調整する石灰などのアルカリ分、色合いに大きく影響を及ぼす鉄や銅、マンガンなどの金属の組み合わせで出来ているようです。これらの成分は、実は野菜づくりや米作りにおいても重要なものが多く、ケイ酸が多く含まれるもみ殻と一緒に焼いたら…、のらくら農場さんやないとう農園さんのミネラルを含む畑の土と一緒に焼いたら…、など、そこでしか使えない釉薬が存在しているということを認識しました。

いつか、どこかで、だれかがつくってくれた大量生産の陶磁器を、いま、ここで、わたしたちにしかつくれない唯一無二の陶磁器に生まれ変わらせる。大量生産の陶磁器を否定するのではなく、それをベースにした上で新たに自分たちだけの価値を付加する。そんなことを実感する時間となりました。

この窯焼き体験は、今年中には皆さんにもご案内できるものにしていく予定です。ぜひ楽しみにお待ちいただけたら幸いです😊

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