これからの下水汚泥肥料の普及
- 秋山 智美
- 2024年7月13日
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あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これから普及していくことが見込まれる「下水汚泥肥料」。言葉の響きから、ちょっと抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれません。これから普及していくことが見込まれると考えており、今回はその背景やどのようなものなのかをお伝えさせてください。
下水汚泥肥料とは
下水道には、雨水に加えて、汚水と呼ばれる調理や洗濯で生じる生活排水、水洗トイレからのし尿、事業場からの産業排水などが含まれており、これらが処理場に流入しています。この雨水と汚水を合わせた下水を処理する過程で分離された汚泥(下水汚泥)から作られた肥料が、「下水汚泥肥料」です。作物を育てる際の三大肥料成分と言われる、窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)のうち、下水汚泥肥料には窒素(N)・リン(P)が多く含まれています。
日本では年間235万トンの下水汚泥が発生しており、1990年以前はどの殆どが埋め立て処分されていましたが、現在は以下のように利用・処分されています。
※令和4年度の下水汚泥利用状況
建設資材(50%):下水道工事の埋め戻し、セメント原料、レンガなどの原料として利用
埋立等(22%)
肥料利用等(14%):乾燥、発酵させることで、肥料や堆肥として利用
燃料化等(10%):乾燥、炭化することで、石炭代替燃料として利用
日本における肥料の変化
日本の農村では、肥溜(こえだめ)や野壺(のつぼ)と呼ばれるし尿を発酵させる穴や壺が設置され、米や野菜などの栽培に利用していた歴史があります。江戸時代の後半には都市部のし尿が売買され農村部に運ばれるようになっていました。 その後明治に入り近代化が進むと、水道の整備が進み、第二次世界大戦後には、し尿の肥料としての利用が禁止され、化学肥料への転換が進められてきました。
下水汚泥肥料の利用が広がる背景
これまでも下水汚泥の肥料利用に向けた動きはあったのですが、2年ほど前に利用拡大の明確な目標と共に普及を推進する動きがスタートしています。食料安全保障の観点から、緊急で進めることの1つ目として「下水汚泥・堆肥等の未利用資源の利用拡大により、グリーン化を推進しつつ、肥料の国産化・安定供給を図ること」が挙げられています。
一つ目が、下水道事業を所管する国土交通省等と連携して、下水汚泥・堆肥等の未利用資源の利用拡大により、グリーン化を推進しつつ、肥料の国産化・安定供給を図ること。 二つ目として、小麦・大豆・飼料作物について、作付け転換支援により、国産化を強力に推進すること。 三つ目として、食品ロス削減対策を強化し、食品へのアクセスが困難な社会的弱者への対応の充実・強化を図ること。
国際情勢の変化に伴う肥料の自給率を高める必要性に伴う動きですが、これまで進めてきた下水汚泥に含まれる有害物質除去技術の進化もあり、進められるようになっていると認識しています。
化学肥料の自給率
現在、化学肥料の原料はほぼ100%輸入に頼っているというのが現状です。2021年秋以降の中国による肥料原料の輸出検査厳格化や、ロシアのウクライナ侵攻の影響で肥料原料の輸入が停滞したことを受けて、調達国が変化しているものの、輸入に頼っている状況は続いています。
重金属除去技術や管理の進化
下水汚泥の利用には、人体に有害なヒ素や重金属(カドミウム、水銀、ニッケル、クロム、鉛など)の除去が必要で、これまで普及が進まなかった理由の一つとなっているのではないかと思っています。しかし除去技術の進化に伴い、現在、国土交通省がモニタリングをしている77か所の下水処理施設の汚泥のうち、73処理場で肥料法で定める基準値以下となっています。とはいえ、まだ基準値を超えるケースもありどの下水汚泥も利用できるという訳ではありませんが、かなりの下水汚泥が肥料としての利用が可能な水準になってきています。
「2030年までに下水汚泥資源の肥料利用量を倍増する」という目標を国として掲げた中で、安全性がおざなりにならないようにする必要がありますが、資源の少ない日本において、下水汚泥を資源として活用していくということは必要で、かつ理にかなったことだと思っています。保けん野菜の協力農家である、のらくら農場さん、ないとう農園さんでは、現状は下水汚泥肥料は利用していませんが、もし今後利用を検討されることがある場合にも、抵抗感を持たず、安全性や肥料としての品質を確認しながら進めていけたらと考えています。




