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植物が持つ自然毒の力

  • 執筆者の写真: 秋山 智美
    秋山 智美
  • 2023年5月27日
  • 読了時間: 7分

更新日:2023年6月24日

先日、野菜セットに入っていたズッキーニを食べられた方から、以下のようなご連絡をいただきました。

届いたズッキーニを食事に出したところ、普段は大好きですぐに食べてしまう子どもが、殆ど箸を付けずに残していました。不思議に思って食べてみたところ、とても苦い味がしました。

ウリ科の野菜独特の苦みを多少感じることはあっても、“強い苦味”のあるズッキーニに私自身出は会った経験がなく、どういうことだろう?と調べてみたところ、苦味成分である『ククルビタシン』を大量に含むものが、極稀に出来てしまうという事が分かりました。


そしてこの『ククルビタシン』、食中毒を起こしてしまう可能性のある成分とのこと。改めて、ズッキーニのように普段食べる野菜によって発生しうる食中毒について、知識を持っておくことの大切さを実感する機会となりました。

今回は、このような植物の持つ自然毒によって発生しうる食中毒について、調べて把握できた内容を皆さんにシェアさせてください。

食中毒の原因

食中毒と聞くと、寄生虫、細菌、ウィルスなどのイメージが強く、発生数も多いのですが、植物や動物などの食材自体が持つ毒成分(自然毒)を食べることでも発生します。

1年間の食中毒発生件数は直近5年間の平均で991件、そのうち約6.5%がこの“自然毒”により発生をしています。

植物が原因となっているものの多くは、山菜採りや家庭菜園を通じて、誤って有害な植物を食べてしまったケースのため、日常生活において過度な心配をする必要はないかと思います。ただ、日常的に食べている食材でも注意が必要なもの、頭の片隅に置いておくと良さそうなものがいくつかありましたので、ご紹介させていたただきます。



注意が必要な野菜

<🥔じゃがいも(ナス科)>

注意が必要な野菜として真っ先に思いつくものかもしれません。芽やその根元周辺、緑色になった皮や実に特に多く含まれる『ソラニン』や『チャコニン』という成分が、吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなどの症状を引き起こすと言われています。

アンデス地域で栽培が始まったとされるじゃがいもですが、当時は『ソラニン』や『チャコニン』を多く含む種が殆どだったようです。これらの成分をたくさん含んでいるため病害虫に強く育てやすかったじゃがいもは、気候を利用した冷凍乾燥加工によって解毒をして食べていたと言われています。

品種改良が進むことでこれらの成分の含有量は、現在一般的に栽培されているじゃがいもでは冒頭に挙げた芽や緑色になった部分、未成熟ないもを除くとかなり微量で、食べても影響がでない程度になっています。

じゃがいもを食べる際は、以下にご注意いただければと思います。

  • 光が当たらない場所で保存をする(芽が出たり緑色になったりするのを防ぐ)

  • 家庭での長期間の保管をしない(買い貯めるをしすぎない)

  • 芽が出た場合は、周辺を大きめに取り除く

  • 緑色になった場合は、緑色の部分が無くなるまで厚く皮を剥く

  • ”苦味・えぐみ・ピリピリとする辛味”などを感じたら、食べるのをやめる

  • 未成熟なじゃがいもは食べない(家庭菜園で育てる際は要注意)


<🥒ウリ科の野菜>

発生ケースも少なくあまり食中毒のイメージがない野菜ですが、キュウリ、ズッキーニ、カボチャ、トウガンなどに含まれる、『ククルビタシン』という成分が原因で、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を引き起こすことがあると言われています。

品種改良をする以前の野生種に多く含まれていた成分で、現在、食用で栽培されている品種では葉や茎には多く含まれているものの、実には殆ど含まれていません。しかし、生育環境などにより極稀に含有量が多くなるケースがあり、強い苦味・えぐ味を持つのですが、まだはっきりとした原因は解明されていないようです。そして残念ながら、見た目では含有量が多いかどうかの判別ができません。

最近は苦味を感じるキュウリに出会わないからか、調理をする際に端を少し切り落とすだけですが、幼少期は切り落とした端っこをすり合わせて白い泡を出し、取り除いていました。当時は無意識にやっていましたが、これは『ククルビタシン』を取り除く作業だったようです。

ウリ科の野菜を食べる際は、以下にご注意いただければと思います。

  • “強い苦味・えぐ味”が無いかを確かめてから使う

  • “強い苦味・えぐ味”がある場合は、食べるのをやめる

  • ヘタに近い部分は少し切り落とすのがベター

※同じウリ科の野菜でも、ゴーヤの苦みは『モモルデシン』という成分で、こちらは食中毒の原因にはならないようです。


<🍅トマト(ナス科)>

トマトに含まれる『トマチン』という成分は、吐き気や嘔吐、腹痛、頭痛などの症状を引き起こすと言われています。完熟した赤いトマトには殆ど含まれておらず、葉や茎、ヘタ、未熟の青いトマトに多く含まれています。これは恐らく、完熟して種がしっかり出来るまでの間は病害虫や動物から身を守り、完熟後は動物に食べられることで種を運んでもらう、ということに寄与しているのではないかと思います。

未熟の青いトマトも、かなり大量に食べなければ影響が出ないことが多いとも言われていますが、トマトの個体差、食べる人の体調や体質にも左右されるため、慎重に判断をした方が良いかもしれません。

また今年の3月には、韓国で新たに品種改良されたミニトマト(完熟)に、多くの『トマチン』の類似成分が含まれていたことが原因とみられる食中毒が発生したという事例がありました。完熟したトマトに“苦味”があったようで、違和感のある味に出会った場合は自ら判断をして食べない、という事が大切だと実感する事例でした。

トマトを食べる際は、以下にご注意いただければと思います。

  • 青いトマトは食べない、もしくは少量に留める

  • “苦味”がある場合は、食べるのをやめる


<🥬モロヘイヤ(アオイ科)>

モロヘイヤの莢や種子、発芽から暫くの期間の茎や葉には『ストロファンチジン』という、強心作用があり不整脈やめまい、嘔吐などの症状を引き起こす成分が含まれています。モロヘイヤの種は、完熟すると弾けることで種を拡げます。そのためトマトとは異なり、完熟に近づくほど『ストロファンチジン』の含有量が増加していきます。

莢1つでブタの致死量を超えるとも言われており、アフリカの原住民が矢毒として使っていたほど毒性の強い成分ですが、通常、野菜として食べる収穫適期の葉や茎には殆ど含まれていません。これまで市販品での検出事例も無く、基本的には安心して食べていただけます。

しかし、家庭菜園で育てる場合は、莢や種子を一緒に食べてしまわないよう、収穫タイミングが早すぎないよう、十分な注意が必要です。

モロヘイヤを食べる際は(特に自身で育てる際は)以下にご注意いただければと思います。

  • 莢や種子は絶対に食べない

  • 早く収穫をしすぎないよう注意し、適期になってから収穫をする

  • “舌のしびれ”など、違和感を感る場合はすぐに食べるのをやめる

今回、植物が病害虫などから身を守るために持つ自然毒の力を調べる中で、とても当たり前ではあるのですが、改めて以下のようなことを実感する機会となりました。

  • 普段食べている野菜は長い年月をかけて“人が食べる”ことに合わせて改良が積み重ねられてきた賜物なのだということ

  • 頭の片隅にちょっとした知識を入れておくことで、防げる危険があるということ

  • とは言え知識に頼るだけではなく、人間が危険を察知するために発達してきたと言われる“苦味”や“酸味”などの味覚を研ぎ澄ませることで、気づけることが多くありそうだということ


冒頭の野菜を食べられた方からのご連絡が無ければ、皆さんに今回のような内容をお伝えすることも出来なかったと考えると、言いにくい内容だったかもしれませんが、お伝えいただけたことを大変ありがたく感じています。

もしかすると、文句を言うようで申し訳ないかな…と思い、違和感や不安を感じたことを心に留めていただくケースがあるかもしれません。しかし、今回ズッキーニの違和感をお知らせいただいたことで、農家さんも含めて大きな学びを得ることができたと思っています。

ぜひ、ちょっとしたことでも、何かお気づきのことがありましたら、ぜひお気軽にお知らせいただけたら幸いです。ピンポイントでの改善ということだけではなく、皆の学びになっていく、そんなきっかけにしていけたらと考えています。

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