“規格外”野菜について考える
- 秋山 智美
- 2023年9月30日
- 読了時間: 5分
最近、猛暑や雨不足による生育不良の影響で野菜の価格が高騰しているというニュースを目にしたり、スーパーなどでの買い物の際に実感をしている方も多いのではないかと思います。
家計としては厳しいと感じられる方もいるだろうと思う一方で、肥料を始め、燃料や各種資材などの価格が上がり生産コストが上昇する中でも価格に反映することが出来ていなかった農産物。個人的には現在の流通量の減少に伴う価格高騰が落ち着いた後、元の価格に戻るのか、生産コストの上昇を踏まえた価格になるのかが、とても大切な分岐になるのではないかと思っています。
今回は、そんな価格高騰の中で相対的に安い価格で販売されていることが多く、また食品ロスの観点から耳にすることが多くなっている「“規格外”野菜」についてお伝えさせてください。

野菜の流通
規格の前に、少しだけ野菜の流通についてお伝えさせてください。
保けん野菜では農家さんから直接皆さんへ野菜をお届けしていますが、国産青果の約80%は卸売り市場を経由して流通しています。
卸売市場での委託販売では“全量引き受け”が原則とされていて、市場に持ち込まれた野菜は全て受け取り、卸売業者が販売を引き受けることになります。

野菜の“規格”とは
「規格外野菜」と聞くと、全国統一の規格があるように聞こえるかもしれませんが、形や大きさなどを全国統一で規定した規格は現在では存在しません。野菜は工業製品とは異なり一つひとつ個体ごとに形や大きさなどが違うため、“取引先ごと”にどのような野菜を納品するかを設定しています。あくまで事例ですが、例えば以下のようなイメージです。
首都圏のスーパー向け 少人数や外食の多いご家庭でも使い切りやすい、ボリュームを抑えたパックを。
加工会社向け サイズが大きく、皮を剥いた時の可食部がより多くなるものを。
直接お届けする個人の方向け スーパーでは並ばない小さなサイズだけど、実は使い勝手が良いものを使い方とセットで。
ただ、前述の通り80%が卸売市場を経由した流通となるため、市場取引での規格というのが一般的にイメージされる野菜の規格という事になるかもしれません。野菜の品質の担保や大量の野菜を効率的でスピーディーに流通させることなどを目的に農林水産省が制定した「野菜の全国標準規格」というものがありましたが、2002年(平成14年)に廃止されています。現在は、生産者の代表である生産部会、JA、卸売会社が購入者である小売店などのニーズなどを踏まえて設定しています。以下はJA全農ひろしまのホームページから抜粋したものです。


“規格外”野菜について思うこと
前述の通り、“規格外”には統一の基準がある訳ではなく、各販売先との交渉の上で設定することになります。特に市場に出すものについては、効率的な流通という観点から形や大きさが細かく規定されているため、その規格に合致しない野菜が畑に捨てられるのはもったいない!という観点から、“規格外”野菜が注目されるようになったのではないかと思っています。(農林水産省及び環境省が発表している「食品ロス」の数値に、この畑で捨てられている分は含まれていません。)
ただ、“規格外”野菜を全面に押し出すこと、安価に販売をすることについて、違和感を感じていることもあり、きれいにまとめられていないのですが、その背景をお伝えさせてください。
畑に捨てられる野菜の多くは“規格外”が理由ではない これはデータが出ている訳でないのですが、農家さんの話、野菜の需給情報、農家で働いた感覚などから、「市場価格が安く出荷しても赤字になってしまう」「天候不順や病害虫などの被害を受けた」というケースが圧倒的に多いのではないかと思っています。
畑に捨てる=土に還る 畑に捨られると聞くと勿体ないと感じるかもしれません。ただ、捨てた野菜は畑で土に還ります。もし流通~消費のどこかで余り焼却処分をされるのであれば、畑で土に還った方がずっと良いのではないかと思います。
収穫や出荷にも手間がかかる キレイに出来た野菜よりも収穫にも出荷のための調整にも手間がかかります。もともと利益率が低い経営状態においては、追加の工数をかけることが難しく、さらに安い価格で販売するのは経営の持続性を失うのではないかと思っています。
形が歪なものを加工品にするのは簡単ではない 加工品は土などの混入を徹底的に防ぐため、例えば根菜であればしっかりと皮を剥きます。そのため形が歪なものは、手間がかかることに加え、可食部が少なくなってしまいます。もちろん不可能ではないのですが、加工会社としては極めて安い価格で仕入れる、もしくは高価格な商品とする必要があります。
将来的な野菜の価格への影響 現在は“規格”に合致した野菜においても生産コストを価格に反映できていない、という状態の中で、更に価格を低下させる要因になると思っています。特に流通量が不足していない状況においては、長期的には不の影響が大きいのではないかと思っています。
違和感の背景をメインに記載しましたが、ただ、見た目だけにとらわれずに野菜を選ぶ、という観点において、とても重要な意識変化に繋がる可能性も持っていると感じています。今後も続いて欲しいものをきちんと見極め、誰から買うか?いくらで買うか?ということと併せて考え選択することが、将来の自分たちのためにも大切なのではないかと改めて感じています。


