農業を取り巻く環境を考える ~のらくら農場 萩原さんの話をきっかけに~
- 秋山 智美
- 2024年6月22日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年6月22日
先日、のらくら農場代表の萩原さんのから、こんな話を伺いました。
これから農業で生きていくのは、本当に大変になっていく。まだまだ自分がしっかりと現役の間に、自分の経験を若手の意欲的な農業者に還元していきたい。“転ばぬ先の杖”にはなり得ないけど、“転んだ時に立ち上がる時の杖”にはなれると思うし、なっていきたい。
萩原さんの経験や知恵を求める声は多く、これまでも求めに応じる形でこのような取り組みはしてきてると認識しているのですが、改めて、意を決しておられる、そんな空気を感じました。
今回は、萩原さんがこのような思いに至る背景にもなっている、現在の農業を取り巻く環境について、萩原さんが肌で感じられているということと併せて、お伝えさせてください。

顔が見える農業者の廃業増加
農業従事者の高齢化、減少が進んでいるということは、ご存じの方が多いかと思います。既に65歳以上の方の割合が7割を超え、人数も10年後には半分、20年後には1/4になるとも言われています。
ただ、萩原さんに伺ったのは、こんな話でした。
統計上の数値だけでなく、あの人とあの人というように、固有名詞で農家の廃業が増えている。倒産ではなく、経営体力があるうちでの廃業、若い人の廃業が僕の周りでは続いている。借り入れがあり足を止めたら倒産してしまうのでやめるにやめられない、という経営体もいくつもある。僕がその農産物を食べてみて、唸るほど美味しくて、センスもすごい農業経営体でさえも。
歳を重ねて引退をする方が沢山いる、というだけではない、何か変化の潮目のようなものを感じる話でした。

資材価格の高騰
以前のブログ「野菜の生産コスト上昇について考える」でもお伝えさせていただいた、農産物を生産するために必要な様々な資材(種、肥料、農薬などの他、軽トラやトラクターに利用すガソリン、ハウス温度管理などの電気、ネットやマルチ、段ボールなどの消耗品、ハウスや出荷場などの建設に利用する資材など)の価格は、直近2年ほど高止まりしており、今後も高止まり、長い目で見ると上がっていくと考えています。
農産物価格も乱高下をしながら多少上がっているように見えますが、まだまだコストを吸収できている状況では全くありません。特に市場を経由して取引をされる場合、野菜の価格は基本的に需要と供給のバランスで形成されており、変動の大きな要因は“天候”です。

気候の変化
昨年、ないとう農園の内藤さん、のらくら農場の萩原さんから、それぞれ以下のお話を伺いました。
今年の暑さと雨の少なさはこれまでに経験がなく、種や苗を植えても一晩のうちに虫に食べられてしまい全てやり直すということも。夜の間の気温が下がると虫の活動が弱まるが、日中の暑さだけではなく夜の温度も高かったため、かなり長い期間虫が多く発生している。
雨がとても少なく、普段あまり発生しない潅水(水やり)の作業に追われている。結果的に、夜中にヘッドライトを付けながら遅れてしまった作業を進める日も。スタッフのみんなが自主的にやってくれているが、この状態を続けてはいけない…
“水やり”と一言で言っても、水道が整備されている訳ではない広大な畑に水やりをするのは大変な作業です。普段、露地栽培(屋外の畑での栽培)では、野菜へ与える水は基本的に雨ということが多いのですが、水やりをするとなると、軽トラの荷台いっぱいのタンクで何度も畑と水道のある出荷場などを往復しながらの作業となります。

気温の上昇に加え、大雨の増加、年による降水量の変動の増加などにより、その土地に合った作物を作るという“適地適作”の変化や、毎年の変化への対応難易度が高くなっていると感じています。そして、この変化は更に加速することが見込まれているのは、ご存じの通りです。栽培する作物や栽培方法、リスクを見込んだ価格など、様々な工夫、変化が必要になっているのではないかと思います。




冒頭、農業従事者の減少について少し触れましたが、生産量自体は現時点では減っておらず、大きな経営体の割合が少しずつ上がっている状況です。生産量が減る訳でなけければ、弱い経営体が淘汰されていくことは問題ないのかもしれません。ただ、一つひとつの経営体、一人ひとりの農家さん、を紐解いた時に、萩原さんが「美味しい!」と唸るほどの野菜をつくっていたような農家さんが立ち行かなくなる、という状態には、何か手を打つ必要があるのではないかと感じています。
保けん野菜でも引き続き、加入者の皆さんのご理解、ご協力のもと、これからも残って欲しいと思う農家さんと協業をしながら、より良い状態に向けて活動をしていきたいと思います。


