種のはなし ~種をつなぐ~
- 秋山 智美
- 2024年2月17日
- 読了時間: 4分
保けん野菜の加入者のお子さまと一緒に行っている、いつも食べている”野菜”を起点に自由に興味関心をひろげながら学ぶ場「やさい研究会」では、少しずつ自分たちで「育てる」ことにチャレンジをし始めています。最初に育てたほうれん草は既に収穫を終え、自分たちで食べたり、農家さんへお届けしたりしたのですが、その中の一人から「いくつかをそのまま育てて、種を取って、その種を播いてみようと思います🥬」というご連絡をいただきました。 今回は、この「種をつなぐ」という、これまで長い歴史の中で積み重ねられてきたバトンを受け取り、次につなげていくことについて、考えてみたいと思います。

種の種類
聞いたことがある方も多いかもしれませんが、現在、一般的に流通している野菜のほとんどは「F1種」という、雑種の一代目の品種です。このF1種を作れるようになる前までは、長い間「固定種」と呼ばれる種を使って栽培をしていました。
固定種: 代を重ねても形質が大きく変化しない種のことで、各地の環境にあった種の選抜を繰り返すことで形質が固定されていきます。世界から日本へ入ってきた野菜が少しずつ各地に広がり、その土地に合ったものが選抜され定着していきます。江戸時代には参勤交代により地域を大きく超えた種の交易が行われ、また新たな地域でその土地に合ったものが生まれていきました。現在、伝統野菜と呼ばれるような野菜は、この頃にできていったものが多いと言われています。 “代を重ねても形質が大きく変化しない”と言っても、自然界での交配を行っているため少しづつ形や大きさ、味、生育時期などの形質がばらつきます。しかしこのばらつきも大切で、選抜を少量で行いばらつきを少なくすることもできますが、近親相姦と同じメカニズムで遺伝子の多様性が損なわれ、弱くなっていく可能性があります。
F1種: 固定種のばらつきは、安定的に、大量に、味や見た目の揃った野菜を生産したい場合には、邪魔となります。そこで開発されたのがF1種(Filial 1 hybrid)と呼ばれる、雑種一代目の品種です。雑種の一代目は、親世代よりも生命力が高く、形や大きさ、生育時期などの性質も揃った子世代として生まれてくるという性質があります。この性質を活かしたF1種は、均質な野菜を効率良く育てることができる種として、1920年代にアメリカで初めてトウモロコシが、野菜としては日本で初めてナスが開発されました。現在日本で流通している野菜の99.5%は、このF1種と言われています。
※もし良ければ、以前のブログ「種のはなし ~品種改良~」「種のはなし ~種の自給~」も読んでみていただけたらと思います🌱
F1種とその次の世代
F1種は効率良く野菜を生産するにはとても適した種である一方で、この性質が出現するのは雑種の第一代目に限られるため、種を採って栽培するのには適していません。そのため野菜の生産においては、種は毎回購入して育てるというのが一般的になっています。メンデルの法則を思い出していただくと、F2種のばらつきをイメージしていただけるかと思います。
例えば、病気に強い(顕性形質)けどまずい(潜性形質)種と、病気に弱い(潜性形質)けどおいしい(顕性形質)種を掛け合わせて、病気に強くて美味しいF1種を作り、さらにこのF1同士を掛け合わせてF2種を作る際の、「病気へ耐性(強いか弱いか)」に注目したイメージ図は以下の通りです。病気への耐性以外にも様々な形質が組み合わさるため、かなりばらつくことが想像していただけるのではないかと思います。
※以前は優性/劣性と呼んでいましたが、優劣ではなく表面に現れるかどうかということで、「顕性/潜性」と呼び方を見直しています。

ただし、ばらつく中での先発を何世代か繰り返していくことで、自分だけのオリジナルの固定種をつくることができる可能性も秘めています。 ※少量を育てる場合は特に、遺伝子が濃くなり続けていってしまう、そもそも種ができない(野菜によっては雌雄が分かれているものがあり、種を取ろうと思った株が雌雄どちらかだけということがある)という可能性があります。
種をつなぐ
安定的に、大量に、味や見た目の揃った野菜を生産することを考えると、F1種の種を毎回購入して育てるというのが合理的な選択になります。しかし、自分たちで未来に繋げていくことができない種でもあります。もしかすると、この長い歴史の積み重ねを経てきた種を繋いでいくというのは、家庭菜園でみんなで担っていく必要があることなのかもしれません。これから、やさい研究会でも「育てる」から「繋ぐ」も含めて、体験をしていけたらと思います。



