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記録的な雨と日照不足の9月から考える、野菜の今とこれから

執筆者の写真: 秋山 智美
秋山 智美
5 日前
読了時間: 5分

更新日:4 日前

先日、自家用として家族で育てているお米の稲刈りを、例年よりも1ヶ月近く遅れて、やっと終えることができました。濡れた稲は機械に詰まりやすく、品質も低下しやすいことに加え、ぬかるんだ田んぼでは重い機械が沈み込んでしまうため、稲刈りを行うには、晴れの日が続き、稲と田んぼが乾くのを待たなければなりません。今年は長雨でその機会がなかなか訪れず、周囲では稲が倒れてしまっている田んぼも目立ちました。

こうした天候は、田んぼだけでなく、野菜の生育にも大きく影響しています。今回は、雨の多さと日照不足がが野菜にどのような影響を与えているのか、そしてこの先どのような影響が出てくるのか、現時点で見えていることを整理してお届けさせてください。

☂️雨の多さも、日照の少なさも、記録的だった今年の9月

まずは、今年の9月がどれほど特別な天候だったのかを、気象庁の発表をもとに振り返ってみます。 東日本の太平洋側では、9月の降水量が平年*¹の約2.4倍となり、統計を開始した1946年以降の81年間で、9月として最も多い記録となりました。これまでの記録(1982年の平年比約1.8倍)を大きく上回り、関東地方の南部を中心に、12か所の気象台などで記録を更新しています。雨が多かった分、日の光も大きく不足しました。同じく東日本の太平洋側では、9月の日照時間が平年の半分以下となり、こちらも81年間で最も少ない記録です。

*¹気象庁では、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新しています。現在は、1991~2020年の観測値による平年値を使用しています。

2026年9月の降水量平年比(上)と日照時間平年比(下)の分布図(気象庁HPより)


気象庁によると、こうした天候の原因は、秋雨前線が本州付近に長い期間とどまり続けたことです。そこへ南から暖かく湿った空気が流れ込み続けたことで、前線の活動が非常に活発になりました。農家さんからは、「ここ数年の気候を踏まえて、猛暑や干ばつへの対応準備をしていたものの、今年は全く違った」というお話を伺いました。81年間の記録を塗り替えるほどの雨と日照不足は、畑にとっても想定の外にあったようです。


🥬今、野菜の値段に表れている影響

雨の多さと日照不足の影響は、9月に収穫期を迎えていた野菜を中心に、値段に表れています。農林水産省が公表している、卸売市場での10月の野菜価格の見通しでは、はくさい、レタス、ピーマンの価格は平年*²を上回り、ほうれんそう、ブロッコリー、きゅうり、なす、トマトもやや平年を上回って推移するとされています。

*²天候における平年とは異なり、直近5年間の平均を指します。

日の光が足りずに育ちが鈍ったり、雨で土の中の酸素が不足して根が弱ったりして、出荷できる量が減ったことが、値上がりにつながっています。農家さんからも、今年はピーマンやなすの実の付きが悪く、収穫期間も短かったという話を伺いました。

一方で、すべての野菜が値上がりしているわけではありません。にんじんやねぎは平年並み、じゃがいもや玉ねぎは、主な産地の北海道で生育が順調なため、平年を下回る見通しです。また、里芋のように湿った気候を好む野菜は、順調に育っているそうです。


🌱これから、時間差で表れてくる影響

9月は、秋から冬にかけて収穫する野菜の、種まきや植え付けの時期にもあたります。雨と日照不足の影響は、今まさに育ち始めようとしていた、これらの野菜にも及んでいます。

雨が続くと、畑がぬかるんで機械が入れないだけでなく、湿った土を耕すと土が締まって固まり、根が伸びにくい畑になってしまいます。そのため、土が乾くまで作業を待たなければなりません。農家さんからも、今年は「種まきや苗の植え付けのタイミングが無い」という声を伺いました。農林水産省の見通しでも、種まきや植え付けの遅れにより、出荷量が平年を下回る見込みの野菜が挙げられています。

秋の野菜づくりでは、種まきや植え付けにおける数日の遅れが、収穫では1週間、場合によっては1ヶ月の遅れになることもあると言われています。野菜は、毎日の暖かさを少しずつ積み重ねるようにして育ち、その積み重ねがある量に達すると、収穫期を迎えます。春は日ごとに暖かくなるので遅れても取り戻しやすいのに対し、秋は日に日に寒くなり、1日に積み重ねられる暖かさが減っていきます。そのため、遅れて始めた分は、より寒い時期に積み重ねることになり、同じだけ積み重ねるのに、より多くの日数がかかります。さらに、気温がある程度より下がると、生育はほとんど止まってしまいます。

気象庁によると、10月は平年に比べて晴れの日が多くなる見込みとされていましたが、種まきや植え付けの遅れは、天気が戻っても取り戻せるものではありません。9月の雨と日照不足の影響は、この先、冬にかけて収穫される野菜にも、時間差で表れてくる可能性があります。


🧑‍🌾今後の候変化への対応

今年の9月のような天候が、気候変動によるものかどうかは、現時点では分かっていません。ただ、これまでの「平年」を前提にした備えが通用しない年は、これからも訪れるのかもしれません。そうした中で大切なのは、どんな天候になっても、その変化に対応し続けられること。そのような意味で、保けん野菜の協力農家さんの栽培には、そのためのヒントがあるように感じています。

1つは、多くの種類の野菜を育てていることです。どんな天候の年でも、良く育つ野菜もあれば、育ちにくい野菜も出てきます。今年も、実の付きが悪かったピーマンやなすがある一方で、雨の中でも順調に育った里芋がありました。大当たりの年がない代わりに、天候によって大きく崩れることも少なくなります。

もう1つは、野菜がなぜそう育つのかを理屈で理解し、栽培について学び続けていることです。多くの種類の野菜を育てる中で、それぞれの性質を深く知っているからこそ、天候が変わったときにも、具体的な手立てを数多く持っているのだと思います。

これから届く野菜を手に取るとき、今年の9月の天候と、その中で野菜を育ててくださった農家さんのことを、思い出していただけたら幸いです。


※参考資料

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